スマートグラス : 粒数推定と摘粒

研究支援:
農研機構
スマート農業実証プロジェクト「高品質シャインマスカット生産のための匠の技の「見える化」技術の開発・実証」(2020–2021年度)

生物系特定産業技術研究支援センター
戦略的スマート農業技術等の開発・改良「AI駆動型栽培体系:人間とロボットの協働によるシャインマスカット栽培の高効率・高品質化」(2022–2024年度)

ひろしま型スマート農業推進事業「ぶどうの⼤規模経営の実現に向けた効率的な作業体系 の構築」(2022–2024年度)「ぶどうAI摘粒支援システム」

 

ぶどう栽培において、ぶどうの粒数の推定および摘粒作業は、房の形状や果実の品質に大きな影響を与えるため、商品価値を左右する重要な行程である。これらの作業は、摘粒のたびに粒数を数える必要があるうえ、理想的な房の形状を実現するためには熟練者の経験と判断に大きく依存しているため、多くの時間と労力を要する。特に、作業時間が短い摘粒期においては、新規就農者や若手農家にとって大きな負担となっている。

これらの課題に対して、本研究では、粒数推定および摘粒作業を支援するスマートグラス型の支援システムを開発した。本システムには、同研究室のメンバーによって開発された「粒羅 (Tsubura)」というアプリケーションに使用されているモデルと同一のAIモデルを採用しており、高精度な粒認識と計測を実現している。

使用方法として、作業者はスマートグラスを装着し、ぶどうの房を緑色のガイド枠内に配置するものである。ぶどうを認識すると、AIにより粒数が自動的に推定される。なお、その誤差は±1%以内である。また、摘粒対象の判定精度は95%以上を達成している。図1の右側の青い枠内に示すように、摘粒すべき粒は赤色で強調表示される。さらに、正しい摘粒が行われた際には、点滅による視覚的フィードバックが与えられ、推定された果粒数が枠の下部に表示される。次に摘粒すべき粒は逐一ハイライトされガイダンスが提示される。

図1 : スマートグラスを装着して摘粒作業を行うユーザの様子

摘粒作業は、1房あたりの目標粒数 (一般に約30~35粒) に到達するまで行われ、目標粒数に到達するとシステムが作業の完了を通知する。本システムを利用することで、手作業による粒数の計測を不要としたり、熟練者の経験に依存しなくて済むようになるため、熟練度の低い作業者でも高品質な摘粒作業を可能にする。これにより、摘粒期の繁忙期における臨時作業員やパートタイム作業者の雇用も現実的となる。

発表文献

  1. Buayai, P., Yok-In, K., Inoue, D., Nishizaki, H., Makino, K., & Mao, X. (2023). Supporting table grape berry thinning with deep neural network and augmented reality technologies. Computers and Electronics in Agriculture213, 108194, doi: https://doi.org/10.1016/j.compag.2023.108194.
  2. S. Tamura, P. Buayai, W. -D. Chang, and X. Mao, “AR Grape Thinning Support,” 2024 International Conference on Cyberworlds (CW), Kofu, Japan, 2024, pp. 308-314, doi: 10.1109/CW64301.2024.00043.